
当財団が編んだ『青年日本の歌史料館図録』が令和8年4月に完成しました。
同書冒頭に掲載した、小山俊樹帝京大学教授の「刊行によせて」を紹介します。
〈昭和維新運動の精神を将来に伝えるため、運動に挺身した先人の遺品・遺墨等を展示する資料館を開設したいとの希望は、かねてより故花房東洋氏から直接伺っていたところであった。同氏の強い希望によって実現した「青年日本の歌史料館」に並ぶ数々の資料は、先人の息吹を今に感じさせる貴重なものばかりである。
右の資料を写真に収めた図録があれば、展示を理解する助けとして、また居ながらにして資料と触れた際に得た感銘を味わい、思い起こすための価値ある記録とすることができる。そして本図録を手に取ることで、実際の資料を閲覧したいと希望する人が今後あらわれるであろう。維新の先駆者たちの個性を示す品々が、紙媒体に圧縮された形で、多くの方の手に触れることの意義は計り知れない。
実際の発刊に至るまでには種々の労苦があったはずであるが、坪内隆彦氏をはじめとする関係者の鋭意努力によって、困難な計画の実現をみたことは誠に喜ばしい限りである。それとともに今回の本図録刊行は、多年にわたり史料の刊行などを手がけられた花房氏の宿志に副うものにほかならず、将来に運動の精神を示すための深甚な意義を有するものと感じられる。ここに謹んで刊行のお慶びを申し上げるとともに、永きにわたり読み継がれ、故人の志を伝え続けることを切に願うものである〉
次に「はじめに」の一部を紹介します。
〈「青年日本の歌史料館」は令和五年二月、岐阜護國神社境内に開設され、同年五月十五日の大夢祭に合わせて一般公開された。まず、宇都宮幸嗣前宮司(令和六年九月八日逝去)、杉本純一宮司をはじめ岐阜護國神社関係者の皆様と、貴重な史料を提供していただいた皆様に心より御礼申し上げたい。
正面玄関には、三上一統の田口典彦氏のご高配により、書人・柳田泰山師揮毫の篇額が掲示されている。
「青年日本の歌」(昭和維新の歌)は、三上卓海軍中尉が五・一五事件で蹶起する二年前、「民族的暗闇を打開し、開顕しうるものは、青年的な情熱以外にはない」との確信に基づき佐世保の軍港で作ったものだ。
関連史料・文献の収集・展示を通じて、三上氏をはじめ、昭和維新運動に挺身した先人たちを顕彰することを目的に、史料館は設立された。戦後の歴史観においては、五・一五事件をはじめとする昭和維新運動の正しい姿が描かれていない。昭和維新運動に挺身した先人たちの精神と行動の軌跡を検証するためには、昭和維新運動の真実を伝える史料の収集、分析を進めなければならない。そうした思いから史料館は開設された。
しかし、展示された史料、特に維新者たちの書画や作品から感得されるものは、迸る維新者の情熱であろう。三上氏のほか、頭山満氏、井上日召氏、片岡駿氏、堀川秀雄氏、坂元兼一氏、四元義隆氏、中村武彦氏、齋藤兼輔氏、野村秋介氏ら維新者たちの書も展示されている。
作品には、維新者たちの人となりが示されている。三上氏の書、画、作品からは、秀でた芸術家の一面を感じることができるに違いない。中村武彦氏は三上氏を追悼し、「茶をたて、俳句をよみ、書を書き、時に尺八を吹き、風流三昧の中で、三上さんは黙々として人生を楽しんでゐた」と書き残している(「荘厳なる大往生」)。毛呂清輝氏もまた、次のように三上氏を追悼した。
「才能は全く豊かで、一種の達人であった。昔、愛郷塾へ行かれた時、稲刈りを手伝われたが、百姓より早いので皆感心して居た。
ともかく器用だった。草のパイプやお茶を入れるなつめなどは自分で作られたし、私などは戦後の洋傘が貴重品の頃、柄に名前を刻って下さいと頼むと気さくに直ぐ刻って下さった。
尺八なども竹を探して自分で作り仏像なども彫ってゐられた。そのころ私は例のクセが出て、未完成品だったが、観音像を失敬して今でも愛蔵してゐる」(「大夢山人」)
ところで、幕末維新に特化したミュージアムとしては「霊山歴史館」が良く知られている。我々は、昭和維新の精神を伝える史料をさらに充実させ、昭和維新に特化したミュージアムへと発展させることを志している。令和七年元日に急逝した花房東洋氏は、こうした大きな夢を描き、十年以上も前から史料館設立を企画していた。この図録もまた、筆者の発案を容れ、花房氏の尽力によって史料の撮影などの準備が進められた。
花房氏が三上氏と出会ったのは、昭和四十年五月のことである。三上一統の野尻稔氏の紹介で、東京都練馬区の三上氏の自宅を訪問したのがきっかけである。花房氏は昭和四十四年十一月に三上氏の指示で岐阜での活動を開始した。そして、昭和維新の精神の継承を目指して、昭和四十九年十月三十日に岐阜市・木の本公民舘で第一回大夢祭を開催した。「大夢」は三上氏の号である。令和八年五月十五日には五十四回目の大夢祭が斎行される。
花房氏を中心とする大夢舘、昭和維新顕彰財団では、昭和維新運動に関わる出版物を四十年間にわたり精力的に刊行してきた。
昭和六十三年十一月には小島玄之氏の論文集『クーデターの必然性と可能性』(洛風書房)、平成十年十月には片岡駿氏の『日本再建法案大綱』(覆刻、島津書房)、平成十八年十月には『青年日本の歌と三上卓』(島津書房)、平成二十二年二月には木崎龍尾が戦前に作成した『世界興亡図表』(覆刻)を刊行した。
『私家本 大愚記』は、平成二十四年五月に筆者が編んだ。四百四十八頁に及ぶ同書は、花房氏の活動の足跡を示す著作、史料とともに花房氏への生前追悼文を収めた異色の出版物だ。
平成二十五年三月には『三上卓証言─河野一郎建設相邸焼き討ち事件「刑事訴訟記録」』を編んだ。さらに、令和四年五月には、密輸事件「海烈号事件」(昭和二十四年)で獄中にあった時期に三上氏が詠んだ「獄中吟抄」を刊行した。靖國會事務局長を務めた故沼山光洋氏の遺品に含まれていたもので、遺品を譲り受けた荒岩宏奨展転社社長の尽力によって出版することができた。
花房氏最晩年の令和六年には、ドキュメンタリー映画「五・一五事件~君に『青年日本の歌』が聴こえるか~」(製作統括:花房東洋氏、歴史考証:小山俊樹氏、脚本・監督:坂下正尚氏、案内人:大和田伸也氏)の完成に漕ぎつけた。本図録はこうした大夢舘、昭和維新顕彰財団の出版活動の集大成でもある。
岐阜護國神社は、金華山の麓、長良川の畔に佇む大自然に囲まれた風光明媚な場所にある。是非、神社に参拝していただき、史料館に足を運んでいただきたい。なお、史料館分室として大夢舘(岐阜市忠節橋南詰)には「忠節文庫」が設置されている。昭和維新関連の文献・写真・研究資料などの閲覧ができるので、ご利用いただきたい〉
なお同書についての問い合わせは当財団まで。
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